テラフォーマーズ ネタバレ感想

(116)THE HOLY LAND 聖地

前回の終わりは時系列などが不明瞭だったが、今回でそれらは明らかになる。

小町の静かで悲壮な戦いが見られる味わい深いエピソードだ。そして小町のマーズランキングがついに正式に公表されている。

秋田菜々緒の手紙

20年前。バグズ2号計画で小町小吉と秋田菜々緒は火星に飛び、小町が初めて遭遇したテラフォーマーに話しかけている間に菜々緒は首を折られて死亡した(第1話)。

彼らは同郷の幼馴染で、菜々緒は15歳頃から義父(母親の再婚相手)に性的虐待を受けており、現場を目撃した小町はその義父を素手で撲殺し少年刑務所に収監されていた。つまりは殺人犯である。

正義感からの行動で情状酌量の余地は十分にあったとはいえ、プロボクサーでもない中学生が人を素手で殺すには相当な殺意を持って執拗に相手を傷めつける行為が必要と思われるが、バグズ2号編でもアネックス編でも小町がそのことを悔いたり呵責される描写はない。それだけ菜々緒を守ることへの自認が強かったのだろうか。

人を殺したことで延々と続く悪夢や幻覚に苛まれるといった主人公の描き方をする作品は多いが、テラフォーマーズではまどろっこしい内面の葛藤は捨てて「人間サイズに揃えた生き物が殴り合ったらどっちが強いか」という部分のみに焦点を当てており、難しいことは考えず画面の派手さとCGで勝負するハリウッド的なエンターテイメント作品に仕上がっていて、当ブログの筆者としては「考えるだけ無駄だから考えなくていいよね」という立場が取れるので非常に助かっている。

そんな小町だが、菜々緒の遺体を連れて帰れなかったことはずっと後悔していた。「俺が置いてきてしまった」(38話)といったモノローグからもそれは読み取れる。菜々緒の話が出る場面では小町は決まって静かに、そして誰よりも強くなる。激しい怒りに任せて暴れるのではなく、武闘家としての型を保ったままでテラフォーマーを的確に始末する。今回もそのパターンだ。

バグズ2号計画が失敗し、火星から生きて帰れたのは小町と蛭間一郎(現・日本国総理大臣)の2名だけ。U-NASAには菜々緒から小町へ宛てた遺書が残されていた。

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前略 小町小吉様

もしも私が死に貴方だけが生き残っているなら
どうか私の事は忘れて他の誰かと幸せになって下さい

これで良かったのです
貴方は優しいからきっと私に合わせてくれた事でしょう
しかしその優しさがきっと私にとって辛いものとなるのです

何故ならもし二人生きて帰って
もし私の心の傷が癒えたとしても
私は子供をもとうと思えないのです

怖いのです
もし子供を産んだとしても私のような人間に愛せるのかも
私を見殺しにした母親の血を引いた子が
真っ当な人間に育つかどうかも自信が持てないのです

だからこれで良かった
貴方は父親になるべき人
どうかこれからも子供達や沢山の人を導いて下さい

ねぇ小吉
あの時助けてくれてありがとう
導いてくれてありがとう
あなたは私の燈し火でした


…菜々緒は自分のせいで小町の人生を拘束することに後ろめたさを感じていたのだろう。この手紙に悪気はないのだろうが、結果的には火星での悲惨な死別と遺書が小町を火星に縛り付けることになってしまった。実際、普通なら二度と行きたくないだろう火星の地を踏むことを、小町はこの20年ずっと待ち焦がれていたのだ。心のどこかで菜々緒の遺体が特別扱いされているのではないかと期待しながら。

だが再び降り立った火星でカイコガ型テラフォーマーと対峙し、小町はそれが淡い幻想に過ぎないことを知る。菜々緒が他の人間の遺体と同じように肉片にされてゴキブリの手術の材料となったことを悟った彼は、すでに生き続ける意味を喪失してしまったのかもしれない。

アシモフにピラミッドで安置されていた剣を供出するよう促し、文明価値に引きつけられるテラフォーマーの習性を利用。さらに集合フェロモンを使い大群を引きつけ、自らが囮となって残る。それでこの車輌に乗る面々…アシモフらロシア班、マルコス、加奈子、エンジニアチームたち…は海へ出られる。艦長としての判断は、自らが彼らを生かす盾となることだった。

軽く20匹程度のゴキブリを片付け、さらに薬を2本注射する小町。変態が進み背中から翅が生えたその姿は、かつての戦友・ティンを想起させずにはおかない。20年前火星で死んだティンも、幼馴染を失い生きる目的を見失っていた。帰りたい理由がないから捨て身で戦えたし、小町と蛭間一郎を地球へ帰すことはできた。だが自らは免疫不全で人間の姿に戻ることができなかった。

ティンはこうも言う。「お前は仇をとって死にたいだけだ。後を追ってどうする。それで彼女があの世でお前にいい顔をすると思っているのか」と。

たかだか数十匹減らしたところで焼け石に水の大群を相手に小町はどう戦い、どう生きるのか。

土砂崩れ

「あなたは私の燈し火でした」

菜々緒の手紙がそう締めくくる前に、燈という名の男が満身創痍でなお立ち上がる。死にゆく小町から、希望を捨てずに食いしばる燈への世代交代を象徴する場面だ。

だがこちらもいかんせん物量が違いすぎる。九頭龍の火力に救われるのかと思いきや今回九頭龍は動かず。燈に死なれると凱や爆は困るはずなのだが…。

局面を打開する一手は「土砂崩れ」。燈は計算通りといった顔だが、なぜここで土砂がテラフォーマーの群れを巻き込むのか判断が難しい。セリフでの説明はないが、燈がゴキブリの群れを糸で地面に縫い止め、その塊ごと脱出機で引っこ抜いたところ土砂の表面が地すべりを起こしたと解釈すればよいのだろうか。燈の秘めた能力はまだ引っ張るつもりらしい。

つづく

 

ちなみに小町のマーズランキングが公開。4位しか枠がなかったのだが、結果は3位(同率)。アシモフと同じだった。

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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