テラフォーマーズ ネタバレ感想

(117)FAMOUS LAST WORDS 希望の糸と悪意の鉤

隊員たちを生かすため、集合フェロモンとロシア班がピラミッドで手に入れた「剣」を持ち自ら囮となった小町。

押し寄せるテラフォーマーの群れを単身でなぎ倒し時間を稼ぐ。連続で注射を打ち、昆虫の姿へより一層近づいたその異形は、20年前の戦友・ティンを思い起こさせるものだった。

不退転の決意で火星の地に立つ小町、その胸を去来する想いとは…

追憶

ミッシェルの父親・バグズ2号の艦長であったドナテロ。蛭間一郎と小町を逃がすため完全変態して戦ったティン。群がるゴキブリたちを拳で打ち抜きながら、小町は彼らのことを思っていた。かつての戦友もまた、こんな気持ちでいたのかと。

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そしてまた、これからの時代を担う若者たちを激励する。燈、ミッシェル。何者にも染まらず、迎合せず、美しく生きろと。どれだけ潰してもキリがない悪に。身近に…時に自分の中にさえ潜む悪に負けてはならないと。

それが、小町が彼らに託す最後の餞、ラストワードだ。誌面ではまだ小町は健在であり、勢いは微塵も衰えない。だが所詮、幾万の軍勢に対し一個で立ち向かえる時間には限りがある。 いずれは飲み込まれ、蹂躙され、そして小町もまた彼らの手術の贄となるのだろう。

「仇を取って死にたいだけ」。20年前、ティンは小町を喝破した。今はどうだ。彼らに胸を張れるか。

「後を追ってどうなる。それで秋田菜々緒は喜ぶか」。その答えを見出すため、小町は20年耐えた。今この瞬間、間違いなく小町は生きている。止まった時間をただ過ごすのではなく、他者の希望をつなぐために。

どうでもいいが、勝手に「悪」の象徴にされたテラフォーマーたちはいい迷惑だろう。彼らは人間に火星へ連れて来られ、置き去りにされ、未だ詳細は明らかでない「ラハブ」の干渉を受けて今の姿になったはずだ。そして遠く地球を眺めて暮らし、たまに空から降ってくる何かを捕らえて利用しているに過ぎない。

本当の悪とは…ジョジョの奇妙な冒険から引用するならば「吐き気をもよおす『邪悪』とはッ! なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ…!!自分の利益だけのために利用する事だ」 と言ったところだろうか。火星行きの任務を「人類を救うためのミッション」「帰ったら借金帳消しで新しい人生」と無邪気に信じて列に並んだ者たちを利用し、踏みつけたのは誰だっただろうか。それは少なくとも火星のゴキブリたちではない。

九頭龍

降り続く雨。土石流が覆い尽くし、あらかたのテラフォーマーが死滅した地表へ九頭龍から兵士が降下する。先だっての土石流はどうやら燈が引き起こしたものではないようだ。

予測できたわけではない、神頼みの自暴自棄だったわけでもない、だが命がけで戦う燈の意志に何かしらが反応して起きた自然災害であった…らしい。一読者としては全く意味がわからないが、これをいわゆるご都合主義というのだろう。常々言っているがこの作品について科学的な考察はするだけ無駄だ。そういうものだと受け止め結果のみを理解するのが正しい鑑賞の仕方である。

さて土石流の跡をノロノロと進む脱出機だが、中に人影はない。燈、ミッシェル、アレックス、八重子は脱出機を捨てて徒歩で逃げたようだ。

「マーカーは付いているな 蛇绕(シュアラオ)を撃つ」

凱が命じると、九頭龍から球状の何かが発射された。「マーカー」を目がけて。

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…え? いつこんなもん付けたんだ…?

困惑する筆者を尻目に、撃ちだされたボールはその姿を変え、ワイヤーの両端に半球状の機構がついた形となった。さながらクラッカーボール。「マスターキートン」で動物を生け捕りにする「ボーラボーラ」という投げ罠が紹介されていた記憶があるが、あれに近いものだろう。

その蛇绕(シュアラオ・蛇のとぐろの意)は一直線に燈に付けられたマーカーを目指す。雨の中、敵襲を警戒し前を見つめる燈はそれに気づかない。とっさに身を呈して燈の前に立ち塞ぐミッシェル。その胸を鈍い音とともに蛇绕が貫いた。そして鮮血がほとばしり…。

つづく

 

九頭龍は燈の生け捕りが目的かつ失敗が許されない任務のはずなのに、ちょっと位置がずれたら殺してしまうような威力で飛ばしてどうするんだ…と突っ込みたいところだが、燈は内蔵を熊に食われても普通に立ち上がるほどの再生力があるから別にいいのか。

Famous Last Words…遺言名言集。転じて、眉唾で信憑性に欠ける言葉の意。

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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