テラフォーマーズ ネタバレ感想

(125)ANOTHER ONE 護る者と勝ち取る者

サンプル攫取のため膝丸燈を襲ったジェット。車上での一騎打ちは終局を迎えようとしていた。

ジェットが火星へ来て戦う理由はそんなに珍しいものではない。途上国の貧しい生まれで人間扱いされず、軍に入って成果を上げることが唯一彼の前に開けた成り上がる道だっただけだ。

彼には家族もなければ本名すらない。目の前に対峙する燈がミッシェルを護るために命を燃やしているのと対照的に、ジェットはこれから全てを勝ち取るための一歩として燈を殺し、手柄を得ようとしている。

ジェットが本格的に能力を使った戦闘するのは初めてであり、研究されている燈と違って前情報がない。タイ式二刀術に気を取られた燈だが、読者ならすでに知っている通りジェットの能力はテッポウエビ。衝撃波によって物を撃ち出す中距離攻撃ができる。

 

 


↑テッポウエビのキャビテーションについて解説した動画

作中の解説によるとキャビテーション(空洞現象)によって強化された衝撃波は金属に穴を開けるほどの威力があるらしい。ただこの現象は液体に圧力がかかっている状態での話であり、火星の薄い大気の中で水もないのに(雨は降っているが)なぜ同じ理屈が通じるのかはよくわからない。筆者はこの現象について何ら科学的な知識を持ちあわせていないので野暮なツッコミはやめ、そういうものだと理解する。ジェットはすごい衝撃波を作ることができる。それを利用して至近距離で相手に対し発剄のようなダメージを与えることや、衝撃波をぶつけて石などを飛ばす攻撃を可能としている。以上!

ジェットは燈から奪った忍者刀を持っているが、鞘を衝撃波で飛ばし燈の喉を突く。受けた燈の感想は「明らかに投げた威力じゃねー」。メキメキと骨が音を立てる。相当に重い攻撃だったようだ。

言い忘れていたが、燈が切断したジェットの右足は一瞬で何事も無く再生している。あまりのあっけなさに全員甲殻型にすればいいのでは? などと思ってしまう。再生や蘇生は物語の緊張感を大きく削ぐためあまり多用すべきでない手法で、せめて何らかの制限はつけて欲しいところだ。

投げ技からマウントポジションを獲った燈に、ジェットは起死回生の衝撃波を叩きつけ内臓を揺らす。続けて顔面へ2発目。白目をむき膝をついた燈の首筋へジェットが忍者刀を突き立てる。雨音だけが火星の空に広がり、勝者を静かに讃えていた…。

誌面ではまるで二人きりであるかのような描写だが、数メートル以内の同じ車上でバーキとエヴァが戦っていて余韻に浸ってる場合ではないはず。前号で見せたバーキのラッシュでエヴァはすでに沈んでしまったのかもしれない。

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燈が描かれているのはこのコマが最後であり、これだけでは決定的な死亡とは言いがたい。それどころか熊に食われかけの状態から完全復活できる燈に対し、首筋への斬撃が致命傷となるかどうかも疑わしい。ジェットは「燈の首を九頭龍へ引き渡す」と言っているのだが、このコマの後で物理的に燈の首と胴体を切断したかどうかは不明だ。軍が研究したがっているのは燈の肉体そのものであり殺害が目的ではないから、首級だけ持参しても功績十分とはならないだろう。

普通に考えて燈が死ぬとは考えにくいので、ここから「才能・覚醒・勝利」の新ジャンプ三原則に従い読者にカタルシスを味あわせようということなのだろうが、正直に言うと食傷である。死なないとわかっている者のなんちゃってピンチほど白ける展開はない。同じヤングジャンプで連載していた「東京グール」はその弛緩性を打ち破り、誰もが予想しなかったまさかのストーリーを示した。その結末の読後感やマーケティング手法については賛否両論あり批判も目立ったものの 、読者の話題になり強く印象に残ったことは間違いないだろう。多くのコミック作品を読む者としてはああいった挑戦は大いに歓迎したい。あの結末が好きかと言うと、不満の方が多かったが。

テラフォーマーズもそろそろ大詰めなはずだが、コミック慣れしてメタな邪推しかできない筆者をあっと言わせるような番狂わせを期待したい。

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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