テラフォーマーズ ネタバレ感想

(158)THE RIGHT SINNER 気高き罪人

真の愛情を渇望し、愛による敗北に焦がれ人類に敵対するジョセフ。対するはアネックス艦長としてクルーを守りぬく責を負う小町。二人は特に戦う理由もないまま激突する…。

ジョセフの身体能力

正直、ジョセフが同胞に刃を向けた理由は腑に落ちるものではない。自らの出生が計算づくであり愛情ゆえのものではなく、ニュートン家の使命に基づきデザインされた人間であった。そこから精神がひねくれ、真実の愛の在処を探し、友人を使って愛の強さを試すようになった。親友のカップルを自らの手で破局へ導き、一方で己は人類種の到達点としてあらゆる文武を優秀な成績で修め、ミッシェル・デイヴスの出生が愛の結実だと考えて彼女自身を所有したいと考えている。愛情が尊いものなら愛の無い自分を打ち負かすはずだからそれを証明してみろ、オレはそれを打倒して先へ進むと、艦長へ戦いを挑む…とても人類の頂点としてデザインされた者とは思えない、浅薄で幼稚な考えだ。

人間としての根本が歪んでいるとはいえジョセフが受けた教育は一流であり、自分の肉体を完全に思い通りにコントロールできるという。また動体視力や反射速度も通常の人間を凌駕しており、変態前の生身ですら圧倒的なパフォーマンスを実現できる…というナレーションに被せて小町のヤクザキックが股間に炸裂。余裕の笑みが消え、脂汗を飛ばしながら内股で苦悶と驚きの表情に変わるジョセフ。「!!!」「!!?」と声にならない悲鳴をあげながら咄嗟にクロスアームでディフェンス。間髪をいれず間合いを詰めた小町の中断順突きがガードを突き破ってみぞおちへクリーンヒットする。これまで何十年と練り上げた小町の武は、遺伝的な肉体のアドバンテージを覆すのに十分なものだった。

この辺りは一芸を極めた職人を評価する日本人らしい発想と言えるだろう。永い間、雨の日も風の日もひたすら空手の練習を続けたのだから才能に頼っているジョセフよりも報われるべきだという思想で、我々は自然とこういった評価基準を色々な場面に当てはめているが、過程が結果を担保すべきだというのは実は日本特有の美学だったりする。逆の考えは「結果が優先」というもので、効率よく美味しい部分を刈り取ろうとする姿勢だ。こう言うと後者にあまりいい印象を持たない読者が多いのではないだろうか。

ところで小町はかつてその拳で殺人を犯している。理由は幼なじみの秋田奈々緒を義父によるレイプから救うためであり、情状酌量の余地はあったはずだが結果的に少年院に送致されて小町の家庭は崩壊した。ジョセフの絢爛豪華な経歴とは雲泥の差がある。小町自身は出所後に人殺しに使った空手を続けることへ抵抗があったようだが、菜々緒に「誰かのために使える力だ」と諭されて以来ずっと修練に励んできた。それがまさに今、己のためだけに力を磨いてきたジョセフを相手に猛威を奮っている。

初めこそ押していた小町だが、残念ながら技を見せすぎたようだ。6連撃まではクリーンヒットしたが、その後の5連撃は全て防がれ、ジョセフに「覚えた(ニヤリッ」)などと漫画にありがちなセリフを吐かれる始末である。小町に殺意がなかったのか、ジョセフの耐久力がずば抜けているのか、いずれにせよ決めるべき場面を逃した小町は不利な状況に置かれてしまった。

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仕切り直し。菜々緒の残滓を背負う小町と、ニュートン家の亡霊に突き動かされるジョセフ。結局何のために戦うのかよくわからないまま、ふたたび両雄が激突する!

つづく。

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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