テラフォーマーズ ネタバレ感想

(166)AMARANTHE 華

劉 翊武と張 明明の回想はまだ続く。

劉の事情

膝丸燈は本多博士によって人工的に創られた子であるも、その出生は謎が多かった。生来の変態能力を持ち、さらに後天的に特性を追加することができる夢のハイブリッドヒューマンを求めて各国は水面下で争奪戦を繰り広げている。

肝心の本多が雲隠れしていたことからその技術は失われており、ここ何年かは燈という結果だけが残された形になっていた。その「結果」からリバースエンジニアリングで技術を解明しようと実際に軍事行動を起こしたのは中国。ミッシェルと燈を生け捕りにしてその誕生の秘密を解明し、ハイブリッド人間を量産して軍事的に優位に立つことが目的だった。

軍事的に優位に立てば国力が増し富が得られる。そうすれば中国奥地の汚染地域も浄化することが可能となる…。そんな荒唐無稽な絵に描いた餅を信じた劉と明明は…そう信じる以外に持ちうるすべがなかったのか…中国首脳の甘言に乗り、彼女はアメリカでバグズ手術の被験体となった。そして彼は20年後、明明の卵子から生まれたデザインド…膝丸燈を回収してこいという命令を受けたのだ。

劉は知っていた。膝丸燈が張明明の遺伝的な息子であることを。だから彼はあの時「返してもらう」と言ったのだろう。

中国の荒廃した国土を救うために国を豊かにする。そのためには外交力の裏付けとなる軍事力と、技術供与や特許で大きな富を生む本多のノウハウが必要。MO手術のネックは生存率の低さ(36%)にあったが、先天的に人体に埋め込むことができるならばこの問題をクリアできる。しかし本多はいない。だから燈を拉致して人体実験にかけるなど…。劉の心は愛郷の使命と明明への思慕との間で揺れる。

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劉と明明は故郷の村が消滅して以来、一度しか会っていないらしい。その後明明はアメリカに工作員として潜入し捕らえられた。そしてU-NASAで飼い殺されていたため、劉に限らず中国の人間が簡単に接触できる環境ではなかっただろう。バグズ計画で火星へ飛んだ明明はゴキブリに殺され、それきりだ。その時火星から帰ってきたのは小町と蛭間一郎だけ。そう考えれば、逆恨みだとしても劉は小町に複雑な気持ちが多少はあったのかもしれない。

そして別れの挨拶も何もできなかった空っぽの距離を埋めるように、燈の存在があった。だが劉はそんな個人的センチメンタリズムよりも国益を重視しなければならない。そしてせめて生け捕りで人体実験するのではなく、楽に殺して死体を持ち帰ろうと試みたようだ。事情がわかった後で劉の言動を復習したい方は7巻をご覧いただきたい。

託し、そして―

舞台は現在の火星に戻る。ジョセフと相討ち倒れた小町の遺体を守るようにして戦い続ける劉とアシモフ。周囲のゴキブリはエリートクラスを残してほぼ片付き、両者とも地面にへたり込む。

劉はアシモフに自分と小町の血液型は同じだと告げ、アシモフはそれだけで言いたいことがわかったようだ。アシモフが背中を向けたまま了承すると、劉は自らの触腕で背中を突き破り心臓を取り出した。小町と燈に次世代を生きて欲しいと願って。

つづく

「蘇生」ができる作品は戦いの局面に緊張感がなくなってしまうので、あまり乱用して欲しくないのが筆者の意見。せめて「亜人」のような蘇生を前提とした戦術が発達した世界観であると目新しくて良いのだが、普通に殴りあって見開きで大見得を切って死んだけど後から復活しますwというパターンをミッシェルと小町で繰り返すのは…。ついでにジョセフもケロッと再生しそうで不安がいっぱい。

結局ジェットやドルジ、西、紅は劉の最期に間に合わないかもしれない。次号あたり息を引き取るギリギリで駆けつけるか?

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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