テラフォーマーズ ネタバレ感想

(19)THE SNEAKERS 正義たちの外周

燈たちが潜入した施設では、なぜかテラフォーマーたちと中国軍が共存していた。アリタケの能力による「奴隷」化ではなく、素の状態での共生である。

本郷の前に立ちふさがった中国軍の細菌兵器研究者・金姫は、テラフォーマーの指導者である「インヴォーカー」が行っている人体実験の実態を知らなかった。このことから、中国軍がゴキブリを一方的に支配しているのではなく、テラフォーマーたちにも機密保持ができるくらいの裁量は与えられていることが窺える。

燈はデンキナマズ型個体を難なく打ち倒すと、日向(ガラガラヘビ型)の血を吸収して発現した熱源追跡能力でインヴォーカーの居場所を特定。だが辿り着いた場所は屋外で、相手は球体に乗って上空へ退避していた。

海洋プラント全体を覆う対空シールドと、球体に備わっている電磁バリアのような機構により、現有戦力で球体を破壊しインヴォーカーを攻撃することは困難に思える。

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3人

そして球体の窓からは、インヴォーカーと並び立つ2名の人間の姿が確認できた。

一人はファティマ・フォン・ヴィンランド。火星でエロネと共にジョセフの遺体を回収した、ニュートン家の一人だ。

もう一人は中国系と思われる男性だが見覚えはない。顔立ちは劉翊武に似ているような気がする。

テラフォーマーの指導者、ニュートン家、中国軍の3勢力が秘密裏に連携を図り、拉致した日本人を人体実験に使い何事かを研究していたというわけだ。

結局のところ、物語に奥行きを持たせるためには正体不明で人語を解さない怪物が相手ではなく、人間同士の争いを描かなければならない。本作の1部・2部に続き、第3部も全く同じ路線を踏襲するようだ。

ファティマが言うには、テラフォーマーとは言葉が通じているわけではないらしい。ではどうやってファーストコンタクトを取ったのかが知りたいところだが、それについて明かされるのかどうかは定かでない。

さらにファティマ曰く、この3勢力は「最終目的のひとつ手前の目的が一致している」らしい。シンプルに考えれば、それぞれの最終目的とはこうだ。

中国軍:中国が軍事力で地球の覇権を握ること
テラフォーマー:地球上に自分たちの生息圏を築くこと
ニュートン家:人類を強制的に進化させること(?)

ニュートン家の目的はよく分からない。彼らが交配を重ねてヒトの品種改良を行っていた事実はあるが、その先にある目的はいまだ知れない。ジョセフのクローンを大量生産して完璧な人間による理想郷でも作ろうとしているのか。それくらい幼稚で単純な目的ならわかりやすいのだが、愛がうんぬんと常人では理解困難な哲学的目標を掲げられると困ってしまう。

その点、中国軍の行動原理はシンプルだ。彼らは国土の大半が過度の環境汚染に晒され、国力が大きく衰退している。彼の国が世界の中心となるためには軍事力が必要で、そのためにMO技術やテラフォーマーを戦力として独占したい。

テラフォーマーは「金が欲しい」といった文化的な欲求ではなく、生存本能に近い部分で動いていると思われるが、だとすると問題はテラフォーマーと中国軍・ニュートン家は利害が対立することになる点だ。

テラフォーマーに人類の生息圏を脅かされてしまえば、中国は国際社会の覇権どころの話ではない。人類社会の規模が縮小すれば支配者が得られる恩恵も減ってしまうではないか。ニュートン家にしても同様だ。落とし所があるとすればどこかにテラフォーマーの自治区を作り権利を認めるといったところだが、そういった高度な契約が交わせるような関係ではないだろう。なにせゴキブリには言葉すら通じないのだから。

だが火星では簡単な絵だけで軍用機械の操作方法を覚えた彼らのことだし、どんな飛躍があっても別に驚くには値しない。「へえ、そんなこともできるんだ。テラフォーマーすげえ」で済むだろう。

どうでもいいが作中ではこの3者による秘密同盟のことを「スニーカーズ(神奸達)」と呼称するようである。

包囲

インヴォーカーらを載せたカプセルがいずこかへ飛び去ろうとしているうちに、海上プラントのデッキにはおびただしい数のテラフォーマーたちが姿を表し、潜入メンバーたちを取り囲んでいた。

政治的な判断により表立った支援は望めない。捕らえられていた民間人たちを守りながら、たった4人でこの数のゴキブリたちにどう抗うのか。

つづく

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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