テラフォーマーズ ネタバレ感想

(37)THE GREAT YOUNG OF KAMI'S STOCK 矜持

寝たきりになる不治の難病の治療のため自ら進んでMO手術を受け、さらに通常は手術から1年以内に死亡するとされる複数回の移植まで行った風邪村一樹。

人として生活できるようにはなったが、変態後はいくつもの生物が融合した禍々しい姿となり、また激しい内臓の痛みに苛まれることとなった。

ヒトの個体としてはジョセフほどではないものの文武とも相当に秀でており、恵まれた体格と人為変態を合わせることで大型の「力士型テラフォーマー」にも力負けせず、ベタ足で殴り合う姿が見て取れる。

風邪村がいつ手術を受けたのかは定かでなく、「1年以内にほぼ確実に死亡するはず」という宣告がまだ生きているのか、それともカウントダウンを乗り越えたのかは不明だが、一読した限りでは人として何かを為すため、寝たきりで生きながらえるよりも短く充実した時間を選んだように思える。

つまりいつ死ぬか分からない状態で変態を重ねて戦い、担当医である海老塚はそれを止めたいが彼の意志も尊重したいという板挟みのまま、状況に流されて風邪村の言うとおりに変態薬を打っている。

そういったプロットはよくあるもので読者としては分かりやすいのだが、何ぶんキャラが唐突に出てきて掘り下げが全くされていないため、風邪村が大声で「俺はッ!俺は! 風邪村一樹だ!!!」と生き様を宣するが如く名乗りを上げた所で、全く感情移入できないのが難点。

「うしおととら」の終盤で関守日輪が名乗る時には、読者は彼女が血筋や性差の葛藤を乗り越えて自立した背景を理解している。だから日輪の憑き物が落ちて晴れ晴れした表情を見て安堵し、自らの意志で戦場へ戻った姿に清々しさを覚えた。しかし風邪村はそういった名場面と比べて格段に安っぽい。ただ感動のための要素を記号化して並べているだけで、燃えないし、泣けない。なぜこんな細切れの描き方をしているんだろうか…。

hinowa

 

肉体的には圧倒的なパワーを持つ風邪村だが、武器は弓だ。軽々と引いているがおそらくサイズも張りも並の人間では扱えないであろう。弓を引き始めたあたりで何故か変態が解け、引き分け・会の段階では完全にヒトの姿に戻っている。弓道八段を持つらしく、さすがに射形は美しい。時間が止まったような静謐。

放たれた矢は正確に力士型テラフォーマーの胸元を貫く。その姿を見守る海老塚は何を想うのか…。

つづく 

■休載
次週から2週間休載、再開は02/16発売号。

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週刊ヤングジャンプで連載中の「テラフォーマーズ」に関する個人的な感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方は閲覧にご注意下さい。

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